放送大学vs慶応(通信) 比較【その5】 与えられるものと要求されるもの
放送大学から「2009年度学生による授業評価」の調査票が
届いた。これまでにも何度か記入したことがある。
先学期に受けたいくつかの科目についての調査で、今回は
「文献学」「人文地理学」「考古学」の3科目だった。
各科目毎に、授業への取り組み、放送教材と印刷教材の
利用の仕方、授業の難易度などを評価するようになっている。
この3科目とも、授業内容と授業のレベルについては私は
十分満足している。
放送大学には、原則4年ごとに改訂され、学問の最新情報を
反映したオリジナルテキストを用いて、各分野に定評のある
一流教授陣が講義するという利点に加え、どこの大学でも
まねが出来ない特長がある。
それは講義内容をどうすれば学生に分かりやすく効果的に
伝えられるかに重点をおいて、専門のテレビ映像制作者群が
放送授業の制作に携わり、映像を通じて時空を超えた臨場感を
提供している点である。
世界各地どころか宇宙の果ての映像がたちまち目の前に
現れる。居ながらにして工場見学や、国際紛争現場に
臨むことができる。一連の講義のために海外ロケをし、
世界各地の第一人者にインタビューし、非公開の文化財に
接近するなどは、放送大学のみが得られる特権であろう。
勿論一般の大学でも、講師は様々なメディアを利用して
講義内容を効果的に理解できるよう努めているが、
個人に出来ることには限度があって、講義内容の伝達に
関しては放送大学ほど多角的に工夫がこらされた講義が
行われているところはないと思う。
以上の点で、大学が学生に与えてくれるものに関しては、
私は十分に満足している。しかし逆に大学が学生に要求する
レベルについては、いささか不満もある。
前記の調査票には、ほかに該当科目に限らず教育内容
や教育方法についての意見を書く欄があるが、私はいつも
同じことを書いている。すなわち
1. 2度目以降に卒業する際の卒業要件が易しすぎる
2. 全部マークシートで、卒論もなしで、自分の意見・見解を
一切述べることもなしに卒業できるのでは大学教育
とはいえないと思う
3. 単位認定試験をもう少し難しくして欲しい
4. 中級外国語の面接授業の受講要件を厳格にしてほしい
である。
一方、慶応(通信)のテキストの古さはお話にならないものも
多く、当然その内容も、現代のニーズにあったものであるとは
言い難い。
しかし、古くからの伝統的な学問分野に従って、学生
自らが学問をする方法と、自分の意見や見解を論理的に
発表する力をつけることを要求されている、という点では、
慶応(通信)は、放送大学より遙かに上である。
結論を言えば、放送大学は最新の知識を与える大学、慶応
(通信)は論理的思考と論述力を養成する大学であるといえる。
受信型と発信型とでもいえようか。
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